2017年10月25日水曜日

俵谷宋雪の「秋草図屏風」

「名作美術館(その225):秋風情」

しばらく続いていた長かった残暑も、先般の季節を一っ跳びしたような真冬並みの寒さに襲われ、
周りでは本来の秋の気配が漂い始め、黄葉(紅葉)を見せ始める樹木たちも増えて参りました。
そこで、この季節に相応しい我が国の伝統的な「秋風情」「秋情緒」の作品を掲載してみました。


俵谷宗雪、「秋草図屏風」
紙本金地著色6曲一双各58.5 x 326.2 cm
江戸時代(17世紀)、重要文化財、東京国立博物館・所蔵

今回の当コーナーは、江戸前期の京の絵師・俵谷宋雪(そうせつ)の描いた大きな屏風絵です。
金箔が全面に貼られた六曲一双の屏風には、萩、芙蓉、女郎花(おみなえし)、薄(すすき)等、
秋を彩る花々が流麗に描かれ、それらの馥郁たる香りも匂い立ってきそうな華やかさが見事です。

師匠の宗達は言わずと知れた琳派の創始者とも目される我が国美術史の大巨匠で、代表作に「風神雷神図屏風」等があり、
その京の雅な画風は多くの弟子・信奉者を生み、書家の本阿弥光悦らとも交流し、優美なコラボ作品も生み出しています。

宋雪に関しては、師匠の宗達以上に詳しいことは分かっておらず、その出自・製作数・没年など詳細はほとんど不明です。
工房印の伊年を使用し、師匠の俵谷宗達亡き後の工房を継いだとみられる画家(絵師)・宋雪の代表的作品、ご覧ください。

下の二枚はその部分図で、細部の様子が比較的 観察し易いようです。


画面向かって右側の小さな花の連なりが女郎花(?)で、その次の薄桃色の大きな花が芙蓉のようです。
その上は両翼に伸びた薄など、画面不鮮明ながら、その優美な形象や色彩は師匠譲りできらびやかです。
あまり良質な画像とは言えませんが、その片鱗だけでも味わっていただければ幸いです。

* * *

「筆者寸感:ネット上の我が国の伝統的絵画作品画像の画質について」

現代のインターネット時代、筆者もまたそれ相当の恩恵に浴し、当ブログの特集等でも有り難く享受中です。
古今の美術作品もまたそのお蔭で多くの画像が容易に見られ得られることは、この上もなく大きな喜びです。
その恩恵の一翼で綴られてきた筆者の当コーナーも、足掛け7年にて実に200回を超える程に至りました。
趣味の音楽同様に美術も大好きな筆者、ネットで検索する喜びを感じながらも、ある種の不満も芽生えました。
それは世界に誇れる我が国の古典美術画像のネット上での少なさと、有ったとしてもその画質に落胆しています。
著作権云々もあるのかも知れませんが、古典美術に関しては所有権上の問題だけで、著作権無しは自明です。
にも関わらず、それら美術品の画質は公的機関を含め、けっして良質とは言えず、その良さが伝わりません。
美術館に自ら足を運んでもらいたいからそうしているのかも知れませんが、正に「宝の持ち腐れ」状態です。
と言うのも、
これまでの当コーナーへのネット上からの良質な画像の多くが、米国など海外からの借用で占められています。
油絵等の西洋絵画だけではなく、我が国の伝統的絵画の画像の入手先ですら、海外のサイトに頼ってきました。
そんな実情の中、これまで以上に日本美術(特に絵画)の良質な画像に行きつくのが困難になってきました。
著作権や所有権も尊重されなければなりませんが、芸術作品は言ってみれば全人類共有の文化であり財産です。
我が国の誇る美術品をもっと海外にアピールすべきだと筆者は考えており、現在の原作の展示方法等も含めて、
その価値や魅力を最大限に引き出すべく、広報活動にいっそうの努力をしなければならないと考えています。
「我田引水」的な望みと思われるかも知れませんが、ネット上での良質な画像の開示もその重要な一つです。
現代の全世界的なネット時代に伴って、我が国固有のアニメや漫画、更には音楽等に幅広い関心と支持を得、
国境や言語・民族を超えて、多くの人々が我が国の文化に好意を抱いている現象は、とても嬉しいことです。
そのルーツ・根幹とも言える日本美術が、更に広く世界中の人々に知れ渡ることは、とても重要な事柄です。
もっと大きな視野を持って、更なる良質な美術作品画像がネット上に投稿・拡散されることを願っています。

これからもこのコーナーにて、美しい日本美術を取り上げていきたいと欲するも、その前途には暗雲が・・・。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その292):JAPAN(日本特集)」

今回の当コーナー、音楽を中心とする従来とは一風変わった趣の動画を2編お届けします。
当初は単に「邦楽」なぞをと目論むも、youtube上にてこの動画を見つけて、一瞬で気が変わりました。
現代の我が国の風俗・風物が画面からほとばしり、瞬時たりとも目が離せない秀逸極まりない作品です。
観光で来日したドイツ人(複数)による動画だそうで、その画面は超プロフェッショナルな仕上がりです。
音楽の方はスピーディーでノイジーな現代音楽のようですが、今回の動画にはぴったりハマっています。

Incredible Beauty of Japan 2015 ( Made by German )

更にもう一つ、日本を紹介する動画をyoutube上からお借りしてきました。
こちらも上作品と同様、国籍は不明ですが、外国の方の撮影・編集による動画です。
どちらの動画作品も住んでいるだけでは分からない我が国の伝統文化や現代社会が美しくも躍動的に活写されています。

JAPAN - Where Tradition meets The Future

以上の動画を見ると、未だ行ったことのない場所ばかりで、筆者自身すらまるで外国人そのものです。
あらためて見直して、また新たな気持ちで各地を訪れてみたくなりました。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(特別編・第2部)」

日本関係ついでに、面白い動画も幾つかお借りしてきました。
以前当コーナーで「365日の紙飛行機」で紹介したアイドルグループAKB48のヒット曲のダンス・カバーです。
日本語学校などの生徒や先生たちが踊るダンス、息抜きにでもご覧ください。人々の日本愛が嬉しくなってきます。

以下3編:世界の「恋するフォーチュン・クッキー/AKB48」振り付けダンス

出演:ポーランド、ワルシャワ日本語学校の皆さん
" Koisuru fortune cookie " /  Warsaw School of Japanese, Poland

出演:ポーランド・クラクフのサンスター日本語学校の皆さん
Sunstar School of Japanese, Klakow Poland

出演:イタリア・ベネチアのカ・フォスカーリ日本語学校の皆さん
Ca Foscari student and friends, Venice Itary

それぞれの各地の皆さんの「日本愛」嬉しい限りで、中には留学・来日されている方々も多数いるとのこと。
その他にもアメリカやニュージランド等、同曲のバージョンがyoutube上には色々とアップされています。
興味のある方は、検索して楽しんで下さい。
他にも美しいメロディーの昭和歌謡など、素晴らしい歌唱と発音の外国の方々の動画も多数あります。
正に現代のワールドワイドなインターネット時代が育んだ文化交流の賜物です。

 *

世界に誇り得る我が国の伝統絵画などの文化、歌詞にもある通り、地味にしていては気づいてもらえないのです。
ネット上の我が国伝統美術の良質画像、満載させてもらえる日が来ることを願いたいものです。
原作及び画像所有権者の皆様、寛大なる公表&シェア、よろしくお願いします。

By T講師

2017年10月18日水曜日

MOA美術館・ 厚木・児童画展(2017年)

「デイリー・ギャラリー(その68)」

お待たせしました。
撮影時の照明による色カブリの色調補正が、予想以上に時間がかかってしまいました。

「MOA美術館・厚木・児童画展(2017年):大特集」

厚木市文化会館・正面玄関

展覧会場にて行われた入賞者・表彰式の様子

先日15日(日曜日)、季節外れの冷たい雨の中、子供たちの絵を見に行ってきました。
毎年 楽しみにしている催し物で、子どもらの素晴らしい感性に、多くの感動と刺激・癒しをも貰っています。

今回のデイリー・ギャラリーはその大特集で、入選作品から約105点の児童たちの作品をアップしました。
アトリエ・キッズや学童クラブの入選作品のみならず、会場を飾る筆者の好きな作品も併せてアップしました。
それぞれの作品の掲載許諾は取っていませんが、主催者による撮影可なので、自由に掲載させていただきました。
もっと少数に絞って、その抜粋編も考えたのですが、筆者の心に響いた作品多数ゆえ、出来得るだけ掲載しました。
実際はもっとアップしたかったのですが、ピンボケ等、撮影不良等で見え辛いものは、惜しみつつも除外しました。
また会場での撮影不可(作品前で保護者の歓談中)や、照明の反射で見えないもの等、撮影を諦めた作品も多数です。

前置きが長くなりましたが、厚木市内の小学生たちによる児童画の力作・快作の数々、以下ご覧ください。
季節外れの冬のような雨と寒さの日々、しばし忘れて心温まる時が過ごせることと思います。

* * *

第1部「アトリエ・キッズ編」

まずはアトリエ・マイルストンのキッズたちの作品から紹介しなければなりません。
夏休みの間に描いた学校宿題の絵画、応募した作品は全員が入選、会場で再会しました。
(低学年より順次掲載、但し画面の都合上、兄弟・姉妹はその限りではない場合もあり。)

 左:MiSちゃん(小1)作。      右:YHちゃん(小1)作。

左:MiMちゃん妹のYuzちゃん(小1)作。      右・SyA君(小2・2年連続)作。

 左:TY君(小4.2年連続)作。      右:SH君(小6・2年連続)作。

 左:Yuzちゃん姉MiMちゃん(小4)作。     右:KMちゃん(小5)作。
右のKMちゃんの風景は筆者故郷の田舎家ですね。KMちゃん自宅で製作。その抒情豊かな描写力、健在ですね。

 左:M姉弟の弟HM君(小3)作。      右:姉のKaMちゃん(小6)作。

  仲良し2人。左:YuM君(小6)作。    右:KM君(小5)作。

KM君、賞もいただきました。おめでとう。

以上12作品。

* * *

「学童クラブ編」

こちらからは、マイルストン学童クラブの子どもたちの作品です。

 左:Knちゃん(小1)作。      右:Ks君(小1)作。

 左:Ynちゃん(小3)作。      右:Kr(小3)作。

左:Czちゃん(小3)作。     右:Wk君(小4)作。

 左:Jn君(小4)作。      右:F/Chちゃん(小5)作。

 元・学童のKt君(小4)作。入賞しました、おめでとう。

 夏休みスポットのN兄弟(小6&小4)、共に入選です。

以上、学童クラブ関係11作品、アトリエ・キッズとの合計で23作品が入選しました。
みんなの制作中の頑張りや失敗・成長等に立ち会えただけに、その感慨もひとしおです。

* * *

「筆者が選んだその他の入選作品抜粋編」

他にも多くの好作に出会えましたが、画面保護のフィルムが照明に光り、どうしても撮れない作品が多数ありました。
残念ながら撮影を諦めたり、撮影後にアップを断念した作品も数多くあり、何だか複雑な心境ですが、ご覧ください。

左右共に小1男子作(右:ちぎり絵)。

左右共に小1女子作。

左右共に小1女子作。

左:小1男子作。        右:小1女子作。

左右共に小1女子作。

左:小1女子作。 中央:小1男子作。 右:小1女子作。
右のハワイの夕暮れ、空の表現が秀逸です。

左右共に小2女子作。
左の伝統的な力強い描法も、右の階調を用いた人物も、共に極めて魅力的です。

左右共に小2女子作。

小2女子作。一心に水中を覗き込む父娘の姿、水音をも届く川の流れ、小2女子とは思えない臨場感です。

左右共に小2女子作。

左右共に小2女子作。

左右共に小2男子作。

左右共に男子作。

左:小2男子作。右:小2女子作。共に詩情あふれる写生画です。

左:小2男子作。        右:小2女子作。

 
左:小2女子作。    右:小2男子作。

左右共に小2男子作。

小2男子作。宇宙を疾走する特急、迫力ものです。

左右共に小3女子作。オシャレな色感が心地良いですね。

左右共に小3女子作。
シンプルな構図に漂う抒情ある光が共に秀逸です。

左右共に小3女子作。

左右共に小3女子作。同じ蝶々でも個性や世界が違って共に良い雰囲気です。

左右共に小3女子作。美味しそうなカラフル・フーズ、そのハーモニーも快感です。


小3女子作。タイトルは確か「奈良公園のシカ」だったと記憶しています。筆者の心に残った作品の一つです。
何ショットか撮影試みるも、保護用ビニール(特に皺々)のテカリが禍いして、結局これがベスト・ショット。
柔らかな光線と餌づけの作者とシカの織りなす感情と抒情が画面に充満していて、詩情豊かな絵画の真髄の様。
水彩絵具の調色と筆致が繊細で、その織りなす空気感には我が国ならではの風土や歴史が内包されています。
こんな素晴らしい感性に出会えることがこの展覧会の魅力で、心が洗われるようで、立ち去り難かったです。

左右共に小3女子作。

左右共に小3女子作(右は、ちぎり絵)。

小3女子作「妹の立ち合い出産」。
ユニークな題材&凄い迫力(全員の顔がチョー素晴らしいです)。逆さ・顔半分のママ、傑作です。

小3女子作。

左右共に小3女子作。同じく空を飛ぶもの。どちらもカッコ良いシルエットで、完成度高し。
左作品、大空も機体も飛行場もその光も臨場感・抜群。右の青いツバメ、何だか絵本の見開きページの様。

人物画:左は小3男子作で両親の絵(!)。右は小4女子作で自画像。共に味わい深い作品です。

左右共に小4女子作。

小4男子作。造形的形体&色感 良いですね。

左と中央:小4女子作。右:小4男子作。洒落ています。

小4女子作。リアルさ、迫力、緊張感!


小4女子作「キャンプで見た夜空」。水面に映った星空と、その様子を見る子供らの表情が良いですね。


小4男子作「父のふるさと(山口県萩市)」。
タイトルが泣かせます。水彩風景画の王道とも言える素直な観察・描写力が秀逸です。


小5女子作「冷たく澄んだ水のカーテン(軽井沢・白糸の滝)」。
岩壁を伝う水流や飛沫、その水面の波色。背後の繊細な緑。振り返るマンガ風な顔。傑作です。


小5男子作。記念写真が元かも知れませんが、絵画の良さに軽くたどり着いているようです。


小5男子作。ユニークな大胆な構図。ねっとりとした色調。


小5男子作「広い海」
小さな細部をコツコツと積み重ねた画面、大迫力です。鉛筆描きの魅力も快感です。


上作品の部分拡大図、


小5女子作「湖」。
この絵もまた筆者の大好きな作品です。水面に反射する子供たちの声や、様々な生命たちの息吹も感じられます。
水面に映る様々な形の樹木や、前景の水草たちが等価で描かれているのも不思議な視覚を生み出しています。
美しい地球、美しい我が国の風土を小さな声で囁きかけてくるような、そんなつましさも魅力の一つです。
女子ならではの傑作。


小6男子作「僕の妹」。写真を見て描いたのかも知れませんが、その隅々は写真を超えています。
遠い昔、筆者も同じ年頃に妹が出来ました。でもこんなに素直に喜びを絵には出来ませんでした。
顔のみならず手足の表情など、画面には作者の愛情が溢れていて、もう涙(なだ)ソーソーです。

「ブサカワ・ネコ3態」

小5女子作。良い面構えですねえ~。

左右共に小6男子作。この子たちもまた面構えが立派ですね~。
構図も大胆で、右のネコなど旅館の有名な女将(おかみ)ネコとのことで、背景の風鈴や桔梗も良いですね。

左右共に小6女子。

小6女子作「小学生、最後の誕生日」。姉妹?双子?お友達?

小6男子作「真剣勝負」。
3人の活き活きとした表情と仕草、金魚柄のガラス風鈴、青畳でお昼寝中のニャンコの後姿も微笑ましいですね。

左右共に小6女子作。見て、受けた感動を紙面上に丁寧に塗り込める誠実さが、心にグッと来ます。

小6女子作「家から見える風景」。
写生ならではの俯瞰・臨場感が素晴らしいです。

以上、筆者の好きな作品を中心に105点ほどをアップさせていただきました。
児童らの瑞々しい感性で捉えられ、塗り込められた絵画。お楽しみいただけたかと思います。
その他にも20作品ほど、時間・撮影数・各条件の許す限り筆者のカメラに収めましたが、
残念ながら、撮影・編集時の諸般の不都合・不適格にて当コーナーへの掲載を断念しました。

「筆者雑感:児童画展を見て」

熟漬け、ゲーム漬け、スマホ漬け等、現代社会の諸問題が児童らに与える弊害が云々されて久しいですが、
この展覧会を飾る数々の絵画を見る限りは、感受性を基盤とした児童らの観察力や描写力は今なお健在で、
むしろ、その発想・着想力など更に向上しているようで、筆者らには頼もしくも力強くも感じられました。
入選した児童らは全体のほんの一部なのかも知れませんが、作品世界を見る限り、健全で好ましものです。
逆に児童らの絵画作品を見ることで、筆者らは感動をもらい、癒しを感じ、明日への活力をも貰えました。

児童らの成長と共に観察力や描写力は向上してゆきますが、無心・無作為な絵心は衰退していきがちです。
その年齢・その瞬間の感性だけが定着・視覚化できる絵画の魅力は、一過性の宝物のような貴重なものです。
今回の機会に、そんな児童らが生み出した素晴らしい宝物たちに出会えて、筆者もまた幸せを貰えました。

入選した出品作が手元へと戻って来たら、是非いつまでも大切に保管していただければと願っています。
額装して鑑賞する際は、UVコート仕様のアクリル板利用にて、直射日光の当たる場所を避けて下さい。
十代のある一時期において、過去の自己を否定し、自らの絵画作品を捨てる子も現れるかもしれませんが、
(実は筆者です)
その前に保護者の手で大切に保管し、頃合いを見計らって再度、作者の目に触れられるようにして下さい。
何故ならそこには、
その時(真の成長後)になって初めて分かる自らの素晴らしい宝物が時限爆弾のように封印されているからです。
ご両親の愛と共に・・・。

最後に、
市内の児童らの珠玉のような絵画作品、筆者の好みだけで勝手ながら当ブログへ掲載させていただきました。
当ブログを美しく楽しく飾らせてもらい、ありがとうございました。
作者の児童や保護者の皆様のご理解・ご了承いただければ幸いです。

責任編集担当:アトリエ・マイルストン主宰・代表、当真(とうま)英樹
乱文にて失礼