2018年1月5日金曜日

新春特集:丸山応挙ら、日本美術の犬

新年明けましておめでとうございます。
当コーナー、今年もよろしくお願いいたします。


その第1弾を(遅ればせながら)お届けします。
およそ1ヶ月振りアップの当コーナー、今年の干支(えと)の「犬(狗)」に因んでの特集となりました。

「名作美術館(その228)」
「新春特集:干支(えと)の犬」


「丸山応挙の仔犬たち」


新年初頭を飾る今回の特集、以前、当コーナーで4年前(2014年6月)に特集した「犬」にまつわる続編です。
前回は2度に渡って特集を組んだので、今回が実質3回目となります。犬が苦手な方にはご容赦を願います。

江戸中期から後期にかけて京を中心に活躍した絵師・丸山応挙を代表する今回の作品、理屈抜きの可愛らしさです。
応挙は京都は丸山四条派の開祖とも目される巨匠で、画家本人のみならず、数多くの優れた弟子たちも残しました。
また余談ですが足の無い幽霊を描いたのも応挙がその最初の絵師であり、後の幽霊画にも多大な影響を与えています。
画家は国宝「雪松図屏風」等の壮大な傑出した大作も描いており、今回作品は画家の身近な作品と言えるでしょう。

小犬たちに並々ならぬ愛情深き視線を向け続けた画家の作品群の一部、どうぞご鑑賞ください。

丸山応挙、「朝顔に狗子(くし)図」、杉戸絵、東京国立博物館・応挙館(旧明眼院書院・愛知)


朝顔の周囲で戯れる仔犬たちが描かれた板絵、動植物共に活き活きとしていて、時代の古さを感じさせません。

下はその部分拡大図
今回の一連の作品群は21世紀の今日においても非情に人気があり、そのおかげでネット上には数多くの画像があります。





 このモフモフ感、もう何の説明も要りません。
と言いたいところですが、輪郭線の無い没骨法(もっこつほう)で描かれた毛の質感は素晴らしく、
輪郭にある毛並みに加え、その全身の全体にまで細かで柔らかな筆致が施されているようです。

これら応挙の仔犬画像、ネット上には日本美術としては例外的に数多くあり、取り上げたブログも数あります。
今流行りの言葉で言えば「モフモフ」感の極みであり、老若男女を問わない圧倒的な人気ぶりは流石です。

下の画は応挙の描いた沢山の犬たちです。
筆者も幼少の頃(親子ラジオの時代)、雌犬を飼っていた経験があり、度々生まれ出でる仔犬の可愛さにはゾッコンでした。
そんなコロコロ・モフモフ・ムクムク・ふくふくしたその可愛らしさ、観賞して下さい。

両作品共に「雪中狗子図」

以前の特集でも記しましたが、白い犬は軽快な筆致の輪郭線で描写。毛の茶褐色や黒色は没骨法と描き分けています。



背景の春兆しの新芽の描写もあって、筆者の今年の年賀状に採用させていただきました。
柔らかそうな毛色、湿気を帯びて和らいだ空気、新春に相応しい絵柄と言えるでしょう。

「応挙の写生画」


これらの犬たちを支えているのが画家・応挙の並々ならぬ観察・描写力であり、日々の膨大な写生群です。
西洋美術に於いてはドイツ写実主義の代表であるアルブレヒト・デューラーの写生デッサンに共通します。
その多岐に渡るモチーフ群と共に、細部までも逃さぬとばかりに克明・緻密に観察・描写されています。



下左図は他の杉戸絵の一部だと思われます。出典元に説明なく詳細不明ながら芭蕉に戯れる仔犬たちが描かれています。
こちらもその全体図や、細部等、是非とも見たいものです。
右は応挙の肖像画でおそらく弟子の方の筆で、温和そうな丸顔はワンちゃん好きな感じがします。

左:杉戸絵「芭蕉」       右:丸山応挙像

以上、丸山応挙の無邪気さ溢れる仔犬たちでした。

* * *

「長沢芦雪(ろせつ)の仔犬」


長沢芦雪は応挙の門下絵師で、特に傑出していた弟子たちが「応門十哲」と称されており、その中の一人です。
下はその芦雪が描いた屏風絵の半隻です。

長沢芦雪「白象黒牛屏風絵」の半隻

白い像との対比で描かれた黒牛の腹部にはこちらに向かって座する小さな白い仔犬が描かれています。

部分拡大図

こちらもまた師匠の応挙譲りの可愛らしさ・無垢なあどけなさが充満しています。

* * *

「伊藤若冲の百犬図」


次は現代において見直された感のある江戸時代異端の画家・伊藤若冲の描いた犬たちです。

部分拡大図

更にその拡大図(上画面・右端中央部)

こちらは前述の丸山派の師と弟子とは異なり、可愛らしさよりはどちらかと言うと非日常的な不思議さが漂っています。
無数の犬たちの体毛の模様は何だか狗よりも三毛猫のようでもあり、またその眼も猫の目に近い輪郭を有しています。
垂れた耳を三角にして上に立てると、他はそのままで猫ちゃんのようになりそうな気がします。
(=^・^=)

* * *

「与謝蕪村の犬」


「与謝野蕪村」

蕪村は文人画の代表的人物であり、江戸中期を代表する三大俳人(他は松尾芭蕉、小林一茶)の一人です。
書画もたしなみ、その画風は伝統的な技巧は用いず、現代で言うところの「ヘタウマ」的表現の元祖です。
一気呵成の筆に任せて描いたような速写シルエットが、実際「ヘタウマ」の極致で活き活きとしています。

* * *

「巨匠・俵谷宗達の仔犬」



国宝「風神雷神図」で有名な我が国を代表する巨匠・琳派の創始者・俵谷宗達の小品・水墨画です。
春まだ浅き時節か、食物を探している様子の仔犬が素朴な筆致で簡素に楚々と描かれています。
しかしその簡素な垂らし込みの技こそが、この仔犬の生命の奥底を描いているような気がします。
白く抜かれたその目には微かに瞳が描かれていて、尾や耳や手足同様に筆者を驚嘆せしめます。
これほどシンプル・質朴に、これほど饒舌な愛情深き眼差しの絵画に出会ったことはありません。
正に「お宝」です。


これらの江戸時代の可愛いワンちゃんたちの姿を見ていると、自然に目尻が下がり頬が緩んでしまいます。
そんな時、体内にはセロトニンやドーパミンが抽出され、穏やかな癒しの気持ちが増幅されるかも知れません。
何かとストレスや負荷の多いこの現代社会、モフモフ・コロコロ・ふくふくとしたワンちゃんたちの姿を見て、
心を和ませ、リフレッシュするのも良いかもしれません。
モフモフ・ふくふくな心穏やかな一年にしたいものです。

* * *


「ミュージック・ギャラリー(その299):冬唄ー3」


「冬の日の沖縄の伝統芸能特集:エイサー」


寒い冬の最中(さなか)、ネット動画をサーフィンしていて故郷の熱い伝統芸能に辿り着きました。

故郷の芸能の中心を成すのは音楽と舞踊で、文化の先進国であった明と大和の影響を受ています。
それらが時代と共に独特に変化し、その後、王朝から大衆へと広がり、演者と観賞者の垣根を超え、
いつしか底辺の広い、垣根の低い、密度の濃い、日々の営みを飾る芸能へと定着、発展しました。
筆者の生まれ育った時代は教育界を筆頭に本土との一体化が促進され、また米国の影響も大でした。
しかし時は流れても、故郷の伝統芸能は薄れることはありませんでした。
むしろ、21世紀の現在の方がより熱く燃え盛っているのかもしれません。

そんな故郷の伝統芸能の一つに「エイサー」があります。
エイサーは音楽と舞踊、加えて空手等の格技や衣装文化等がチャンプルーとなって今なお盛んです。
本島の中部地方では特に盛んで、若者を中心に多くのエイサー集団があり日々稽古に励んでいます。
本番のお盆の時期には本土からの観光客も多く来島、また本土各地の夏祭り等にも出演しています。

また創作エイサー集団を始め、舞踊チーム等の結成や発表も活発化していて、益々発展しています。
そんなエイサー、今では全国的規模で、本土各地の小中学校の運動会でも盛んに演じられています。
前置き、またまた長くなりました。

そんな故郷の若者たちの熱き渾身のパフォーマンス、真冬の寒さを吹き飛ばしてくれると思います。
魂を揺さぶるチム(肝)ドンドンの熱演、どうぞ!

創作エイサー集団 / 琉球舞団・昇龍祭太鼓(しょうりゅう・まつりだいこ)
音楽 :「ダイナミック琉球」/ イクマあきら
於 / 新宿エイサーまつり(2016)
Eisar Dance performance of Okinawa Isle. There name's " Syoryu Mathuri-daiko "
Music by Akira Ikuma " Dynamic Ryukyu " (Okinawa Song)
" Ryukyu "is Old name of Okinawa prefecture in Kingdom period.

その気合・気迫には鬼気迫るものがあり、それは琉球空手を彷彿とさせ、まるで格闘技のようです。
全員の圧倒的なパフォーマンスについ見落としがちですが、先頭のパーランク(小さな太鼓)の女子二人、
その手首スナップも力強く驚異的です。双子なのか姉妹か息も気合もピッタリ、正にエイサー演者の鑑です。


次もまた創作エイサー集団の素晴らしい演舞です。
狭いステージでの選抜少数組の熱演、こちらもまた太鼓演者の右手スナップの強力な瞬発力が驚異的です。

創作エイサー集団 / 琉球國 祭り太鼓
音楽:「ミルクムナリ」 / 日出克
於:東京・銀座ソニービル前・特設ステージ
Eisar Dance Performance of Okinawa isle. There name's " Ryukyu-koku Mathuri-daiko "
 Music by Hidekatsu " Mirukumunari "(Okinawa song)

音楽もカッコ良く、筆者には松明(たいまつ)を持った上半身裸の男たちが半円舞台でシルエットで踊る姿が脳裏に・・・。
遠き幼少の頃に見た白黒映画のアラビアン・ナイトのような幻想感が秀逸です。
歌と作詞作曲は、沖縄民謡の宝庫・石垣島の生んだミュージシャン日出克です。
全国の運動会や動画でも絶大な人気があり、在沖米軍人たちにも圧倒的な支持を得ています。
内容は五穀豊穣を神に感謝する詩で、石垣島の方言で歌われていますが、部分的に解ります。

素晴らしいパフォーマンスに筆者の血もたぎり、「やる気」が全身にみなぎってきます。
それにしても各エイサー隊・全員の体幹の鍛え方・しなやかさがハンパじゃないですね。


もう一つ、エイサーついでに故郷のバンドを取り上げます。
今では全国的人気となった「モンゴル800」と並んで、沖縄を代表するインディーズ・バンドの一つです。
幼馴染で結成したバンド名のイニシャルは彼らの出身地・うるま市の東屋慶名のアルファベット略文字です。
こちらにも熱きエイサー集団が2グループが客演しており、淡々とした深く静かな演奏を盛り上げています。
上2曲とは内容も異なりますが、故郷の歴史や伝統を大切にした愛情がひしひしと伝わって名唱・名演です。

音楽:HY、「時をこえ」(ライブ)
演舞:琉球国祭り太鼓、琉球鼓舞道場
世界遺産・奈良 東大寺・特設会場(2010)
Music by Okinawa's Indies Band." H Y " song is " Toki-wo-koete "
  Eisar dance Performance by Ryukyu-koku Mathuri-daiko & Ryukyu kobu-dojo "
 Live Performance at Todai-ji ( Temple: world heritage ) Nara Prefecture. Japan

指笛も勇壮に、故郷の若者たちの直線的で凛々しい姿と生きる姿勢が目映く美しいです。
締め太鼓と言う大型の太鼓、その重さはハンパではなく、女子たちの心意気に脱帽です。
余談ですが、動画3:46秒あたりの大仏様の表情も凄味があって何故か感銘を受けました。

ネット時代の現在は中央・東京の力を借りなくとも、インディーズ・バンドで全国規模になれる時代なんですね。
熱き心と魂を持った故郷の若者たちの更なる活躍・飛躍、今年も大いに楽しみです。

(-_-;) (*^-^*)


* * *

「新春特集:筆者後記」

さて新年の今年、年頭所感などもう恥ずかしくて記せません。
「有言不実行」を幾年月も重ねた筆者、もう黙して語らず、黙して為を成すしかありません。
昨年果たせなかった帰郷も実現させ、過去を振り返り旧交を温めたり、立ち位置の確認もし、
いつ終わるとも知れない薄くなった筆者の人生のページに、何某かを刻もうと思っています。
結局、平凡な日々の積み重ねの中で「不言実行」を目指すしか術はありません。
頑張ります。
(*^-^*)

「ついでに故郷の親友に一言」

一昨年末・帰郷時の筆者と親友二人(那覇市内の音楽バーにて)

筆者・高1時代からの友人二人・EちゃんとH君(ほんとは呼び捨て)に呼びかけます。
以前、当コーナーにてラッセル・ワトソン歌唱の「Raise Me Up 」を贈った二人です。
昨年末はクラスの友人たちが神奈川へやって来ました、今年こそは君たちの番ですよ。
病に負けず、しっかり健康を取り戻して約束どおりにこちらにも遊びに来て下さいね。
「紅葉の季節の元気な来訪再会、待ってま~す。」
おっと、その前に筆者の帰郷の約束も果たさねば・・・。
 (-_-;)
(*^-^*)

By T講師(Hideki Toma)

P.S.当コーナー、今年も色々トライするつもりでいます。
皆様のご来訪、心よりお待ちしています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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