2017年7月26日水曜日

琳派・師弟の「朝顔図」

「名作美術館(その219):夏特集」

琳派・師弟の「朝顔図」

今回の当コーナー、比較分類学的な美学的論考など一切無用の気軽さで、ご覧ください。

今回の当コーナーは、夏の花「アサガオ」にちなんだ我が国を代表する二人の絵師の作品です。
俵谷宗達と並び、琳派の代表的開祖と目される尾形光琳の作品ですが、香包みと言う小品です。
「香道」で使用される香木を包む量紙で、内容物の香木は沈香や白檀などが有名で一般的です。
下の1点目は出典先に何のデータもなく、寸法など不明ですが、画面に折り跡があり、実際に使用に供されたようです。

尾形光琳、「朝顔図、香包み」、紙本・金地着色

画面左下半分辺りの朝顔には、白い花芯部と周囲の花弁の曜と言う白い班を、顔料の胡粉にて描いています。
小品とは言え、伸びやかな曲線を描くツルや、たおやかな葉など、琳派の巨匠ならではの洗練された形象です。

尾形光琳、「朝顔図、香包み」、絹本・金地着色、32.7 x 23.8cm、シカゴ美術館蔵

上の朝顔図の香包みはかなり大きなサイズで、絵の左右が連続性を持たせた図案で、閉じると一体化されます。
こちらの方の朝顔の方は、蕾や花弁を横方向から見た図柄も多く、画面を大胆に斜めに横切るツルも見事です。
小サイズの実用品の香包みとは言え、その雅な画面は他の追随を許さない洗練された和や京の芸術の極みです。

「香包み:参考写真」

上2点は、現代に使用されている香包みの写真で、蔦や白梅は光琳の描いた代表的な香包みの図案です。
「香道」のような高尚な趣味こそ持たない筆者ですが、この写真だけでももう既に良い香りが想像されます。
( 今夜は久々にお香でも焚いて、そのアロマの放つ幸せ空間に癒されたいと思いたちました。)


鈴木帰一(きいつ)の「朝顔図屏風(その一部分のみ)」

時代は下って江戸後期を代表する絵師、鈴木帰一の描いた屏風の中の朝顔の一部分を取り上げてみました。
尾形光琳より百年、直接の師である酒井抱一と共に「江戸琳派」を興した画家の傑作であり代表作です。
原画はメトロポリタン美術館に所蔵の六曲一双の大きな屏風ですが、今回はその一部のみを掲載しました。
その図版、以前当コーナーでその全図を取り上げた際にネット上で収集したもので、屏風画面の一部分です。
局部的ながら、逆に朝顔一つ一つの瑞々しさが強調され、このような観賞の仕方も筆者の好きな方法です。



朝顔の蕾も愕も葉も葉脈も全て平面的・装飾的ながら、その形体や色彩の造り出す形象はどこまでも優雅です。
尾形光琳の持つ京の都の馥郁たる雅さとは異なる、その当時の江戸庶民文化独特の洒脱さが伝わってきます。

「空梅雨」以来、夏らしい暑さが続いていますが、「朝顔」たちの浮遊感のある軽やかさが目に染入ります。
昔人のように、夏の風物詩の風鈴・水羊羹・花火等を愛でるように、「朝顔」たちの観賞もまた良い物です。



 市内・森の里小学校で、1年生たちによって栽培されていたアサガオたち。

夏休みに入り、自宅に持ち帰られたアサガオの一鉢。
小学1年生たちのように、ツルが今も伸び盛りです。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その242)」

今回の当コーナー、前回から繋がる懐かしのメロディーを取り上げました。
筆者・遠き若かりし頃の中学生時代のヒット曲で、前回記したようにシングル・レコードの全盛期で、
しかも、そのシングル盤の効用を充分に活かした店舗用ジューク・ボックスの全盛期でもありました。
そんなレコード、その当時の物価ではかなり高価なもので、筆者らの小遣い幾らあっても足りません。
筆者の故郷オキナワでは、シングル盤が1ドル、30cmのLP盤は5ドルはする「高嶺の花」状態でした。
そこで友達の輪が活用され、それぞれが好きなレコードを買い、みんなで回しっこして楽しみました。
それはクラスも男女の垣根も超え、しかも学年の隔てもなく、大量のレコードたちが大活躍しました。
1クラス50~55名で17組、しかも年齢の上下に非常に緩い我が南島では、その人数かけるの3倍です。
そんな中、その自然発生的レコード貸し借り組合、雄に100名程が日々その恩恵を受けていました。
故郷伝統のユイマール(助け合い)精神が、筆者ら中学生の間でも、しっかり息づいていたのです。

そんな中、みんなの人気をさらった洋楽ベスト・スリーのグループの一つの中のヒット曲です。
1~2位は共にイギリスが輩出した世界的人気バンドのビートルズとローリング・ストーンズで、
それに対抗すべくアメリカの芸能音楽界が人為的に世に送り出したアイドル的バンドとして登場、
業界の目論見どおりに、当時のティーン・エイジャーの女の子たちを瞬く間に虜にしてしまいました。
筆者のクラスメートの女子たちも例外なく彼らの大ファンと化して、前述2者の人気を陵駕しました。
硬派や本格派を自称する男子たちには妬ましい「目の上のタンコブ」的存在として嫌がれもしました。
そんな男子たち曰く、
「彼らはホントは楽器が弾けない」「オーディションの寄せ集めだからホントは仲が悪い」云々カンヌン、
でもやはりその魅力的なサウンドには抗えず、アンチを自称しながらも影でこっそり聴いていたものです。
当時流行った彼らの大人気TVショーも、「そんな子供騙しなんか見ない」なんて突っ張っていたものです。
筆者も当初こそ、そんな空気に同調していましたが、ミーハー心をついカミングアウトしてしまいました。
「やはり良いものは良い」。彼らの音楽とはそんな風に日陰にて出会い、聴き始め、熱中し始めました。
そんな彼らのレコード達、クラスの仲良し女子が全て持っていて、いつでも何度でも貸してくれました。
半世紀を経た今聴いても、その当時のカミング・アウト決断は、けっして間違ってはいませんでした。


ビートルズも彼らと同様にその初期はアイドルでした。
後期にアーチストへと変貌したビートルズとは違い、彼らはキラ星・流れ星のまま去ってゆきました。
でもそんな彼らの珠玉のヒット曲、世代を超え時代を超え世紀を超え、聞き継がれ歌われ続けています。
アメリカが最も輝いていた頃の何の変哲もない「たかがポップス、されどポップス」、お聞きください。

「デイドリーム・ビリーバー」、ザ・モンキーズ
  " Daydream Believer " / The Monkees  (1968)
懐かしい面々です。人気一番手Vo.のデイビー・ジョーンズは、残念ながらつい先だって黄泉の国へと旅立ってしまいました。
K.b.のピーター・トーク、G.のマイク・ネスミス、Ds.のミッキー・ドレンツ、みんな子供っぽい面影があったんですね。
歌詞の中のホームカミング・クイーンとは、学年最後のフットボール大会後に選出される学園プリンセス等の意味です。
アウトロへと向かいゆくバック演奏に進入する哀愁を帯びたクラリネット(オーボエ?)の響きも胸に刻まれてゆきます。
「アイム・ア・ビリーバー」「素敵なバレリ」「恋の終列車」「モンキーズのテーマ」等、キラ星・名曲、目白押しです。



ヒットから約10年後、全米で「スノーバード」を大ヒットさせたカナダ出身の歌姫がこの曲を取り上げました。
その淡々とした涼やかな歌声、元唄とは違うクールさが快感で、筆者20数年前のマイカー定番曲でもありました。
アン・マレーはまた当曲以外の、ビートルズの 「I'm Happy Just To Dance With You」等のカバー曲も秀逸です。

「デイドリーム・ビリーバー(カバー)」、アン・マレー
" Daydream Believer " / Ann Murray ( 1980 )
歌詞の内容を説明的になぞって再現した動画も面白いですね。



さて3曲目に参りましょう。こちらは現役活躍中の国内アーチストが歌ったカバーです。
筆者好みのエアー含みハスキー・ボイスと、塩谷哲のリズム感溢れるピアノも快感です。

「デイドリーム・ビリーバー(カバー・ライブ)」、手嶌(てしま )葵(あおい)
Singer: Aoi Teshima,  Piano: Tetsu Shiotani
この組み合わせにこのピアノ・アレンジ、誰の発案かは知りませんが、名企画ですね。
歌とピアノだけの生コラボ、他には何も要らぬ正に一期一会の極上の音空間・瞬間に感謝・感激です。


更に日本語によるカバーの4曲目を取り上げました。
筆者の同世代のシンガー、故・忌野清志郎がタイマーズ名義で取り上げた同曲の、更にそのカバーです。
歌い手は今をときめく才能豊かな女性、最近の梅酒のCMでもその非凡な歌唱ぶりを発揮していました。
こんなに素晴らしいカバー曲 & 天分豊かなシンガーに出合えたことは、この上なく嬉しい限りです。

「デイドリーム・ビリーバー(カバー)」、森川ここね( 主役声・歌:高畑充希 )
アニメ映画「ひるね姫~知らないワタシの物語~」主題歌
Singer: Mitsuki Takahata
その余韻がジーンと心に染み入り残る傑作カバーです。
間奏部分で流れるスキャットの旋律が特に美しいです。
但し残念ながら、傑作曲が必ずしも販売数に結びつかないのが、我が国音楽界の悲しい市場原理です。
アニメ映画の方もヒットしたのか承知していませんが、この動画ダイジェスト版で興味が湧きました。
夜景シーンが綺麗で、何度も再現して見ました。日本アニメの益々の発展が楽しみです。
余談ですが、当学童クラブ内でもDVD発売ホヤホヤのアニメ「君の名は」が大好評です。


色々な色の「デイドリーム・ビリーバー」、いかがでしたでしょうか?
文化とはまさにこう言うもので、様々な個性と色々な時代が溶け合い、人々の心を豊かにしてくれます。
筆者、幼き頃に流行ったこの曲に似たデュ―ク・エイセスの元祖「おさななじみ」も聴きたくなりました。

筆者も若き頃に出会い、色々な思い出を作らせてもらいました。
また歌のタイトルのような生き方をして来たような気もします。
( Even now ? )
感謝

By T講師

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