2017年5月1日月曜日

クリムトのスクエア風景画

「名作美術館(その215):春情緒」

本日より5月、筆者の大好きな季節です。
さて、久々の当コーナーです。
一昨年の10月あたりに特集を組んだクリムトの風景画、その際のタイトルを「クリムトの淡泊風景画」としました。
今回はその風景シリーズの久々の登場で、前回特集の紹介作品と同様に、正方形の変形キャンバスを用いています。
画題や製作年等、詳細は不明ながら、おそらく前回作品同様1900年代頃のアッター湖畔での製作だと思われます。
原作が「春」かどうかは分かりませんが、いつものように筆者の勝手な見立てでそう推定させていただきました。

いずれの作品も天候が良く、日向や青空が描かれていますが、両作品共に日陰りの様相が画面を構成しています。
上作品の白い花を擁する野原、下作品の周辺の樹木や草や壁を覆う蔦の緑が初々しい若葉のように感じられます。
そのぼやけた輪郭や対比の柔らかな陰りの調子が、筆者に春らしい爽快な風や雰囲気を想起させてもいるのです。
画家の暮らしたオーストリアと関東南部とでは季節時差もかなり異なるとは知りつつ春と断定、筆を進めました。
ご容赦。



油彩 (Oil Paintings)、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt , 1862-1918) 

絵画は視覚情報で成る世界ですが、その視覚の中には「風」や「匂い」や「過去の記憶」等を導き出してくれます。
エロティックな象徴主義の画家のもう一つの側面の風景画、静謐にして中性的な画面、涼やかな微風を感じます。
行ったことも経験したことも無いにもかかわらず、見る者の感性を揺さぶる「デジャブ(既視感)」、快感です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その270):春の風の歌」

今回の当コーナー、上作品と同様に「春」やその「風」を感じる曲を取り上げました。
今時の爽やかな薫風に包まれると、筆者 何故か反射的・自動的に遠き若き日にワープしてしまいます。
遥か昔日の高校時代、故郷の南島はベトナム景気のロック全盛期で、筆者も朝に夕に熱中していました。
そんな汚濁まみれ中毒のような音洪水の中、アコースティックな音色や歌声にも同時に惹かれていました。
それはまるで朝露のような清涼感があり、筆者の燃えたぎる熱を冷まし、新鮮な空気を注入してくれました。
そう言う意味では真夏の後の秋のようでもありますが、花や若葉の香りや息吹を感じる薫風は正しく春です。
天才シンガー・ソングライター、ジョ二・ミッチェルの紡いだ珠玉の名曲、ジュディー・コリンズ盤でどうぞ。

ジュディー・コリンズ、「ボス・サイド(ズ)・ナウ」(邦題「青春の光と影」)
Judy Collins, " Both Sides Now ", (1967)

カバー曲の大好きな筆者、同曲繋がりで出てきた英国の懐かしき女性シンガー盤をもどうぞ。
この彼女、知る人ぞ知るビートルズのデビュー前繋がりで、リバプールのキャバン・クラブで働いていた人物です。
彼らのマネージャーで一世を風靡したブライアン・エプスタインに見いだされてデビューし、彼らとも仲良しです。
2015年に亡くなったそんな彼女の初々しい姿と歌声を動画で発見、当然 無視するわけもなく、ご登場願いました。

シラ・ブラック、「青春の光と影」
Cilla Black,  " Both Sides Now ", (1969)

歌詞の一部が省略されていましたね。
同曲のカバー、色々な味わいがあって興味深いですね。シラ・ブラック盤も良い雰囲気です。
今では日常のファッションとなったミニ・スカートも、その当時のイギリスで誕生しました。
今から見ると随分と素朴ないでたちで、野暮っぽくも可愛いいわゆる「ヤボカワ」が新鮮です。

同時代・同郷出身・仲間のビートルズの四人のメンバーもまた二人を残すのみとなりました。
そんな中、彼女にも楽曲を提供したことのあるポール・マッカートニーが来日、元気に公演を行っています。
20世紀音楽のレジェンドの貴重なライブ、再度があるのなら、その時には足を運びたいと思っています。
21世紀・現代ポップスの生みの親と言っても過言ではないポールの音楽のシャワーを浴びてみたいですね。


さて、もう1曲。

上楽曲の生みの親、ジョ二・ミッチェルのもう一つの大ヒット曲を続けてみました。
以前にも当コーナーで、別動画バージョンを紹介したことのある筆者の大好きな曲です。
これまた遠く高校生時代に大ヒットした映画「いちご白書」の挿入主題曲となった名曲です。
ユニークな小刻みトレモノ唱法の主はネイティブ・アメリカンのシンガーで、良い味です。
「人生の四季」をテーマにしたこの曲、頬を撫でゆく春の涼風にもピタリ・ハマっています。

バフィー・セントメリー、「サークル・ゲーム」
Buffy Saint-Marie, " The Circle Game " (1970)
Original and Composed By Joni Mitchell, (1967)

筆者もその大ヒット映画を見て、主演のキム・ダービーの健気な可愛らしさに目がハート・マークになったものです。
あれから幾歳月、若者だったはずの筆者もいつの間にか歌詞の中にある「足を引きずる世代」になってしまいました。
正に「光陰 矢の如し」
「いつまでも、あると思うな、親と金」に、
「いつまでも、あると思うな、我が明日」も
加える時節です。

「歌は世に連れ、世は歌に連れ・・・」
人も歌も風景も季節も時代も、私たちの前を足早に過ぎ去ってゆきます。
戻れないと知りつつ、つい忘れてしまう「一期一会」のこの日この瞬間。

美しい涼風薫る「春」もまた然り。
遠い青春を脳裏の隅に蘇らせながら、先に逝ってしまった多くの友人・知人・恩人・叔母たちに想いを馳せながら、
この一瞬(とき)を心して堪能します。

By T講師

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